後天性サヴァン症候群の特徴とは?ある日目覚めた天才たち。

「サヴァン Savant」とはフランス語の「知る」というのが語源で、日本語では専門分野で学識が深いという意味で「碩学(せきがく)」と訳されています。
重度の精神障害を持ちながらも、ある特定の分野において、飛び抜けた才能や能力を発揮されている方々の症状を指します。
例えば、一度読んだだけの書籍を全て暗記できる。
一度聞いただけの音楽を最後まで間違えずに弾ける。
航空写真を一度見ただけで、写真のように細部まで描くことができる。
過去の日付や曜日をすべて記憶している。
などです。
共通しているのは、そのズバ抜けた記憶力あるいは芸術性でしょうか?!
私たちではとてもできそうにないことをサヴァン症候群の方はいとも簡単にこれらのことをやってのけるのです。
その驚異的な能力がゆえに、「天才脳」とも呼ばれているそうです。
凄いですね。
そしてこのサヴァン症候群ですが、先天性いわゆる生まれつきの方もいれば、何らかの理由で後天的にサヴァン症候群になった方たちもいるというのです。
このような方たちは「後天性サヴァン症候群」と呼ばれており、現在のところ、世界で30~40人程いらっしゃいます。
それまで普通の生活をしていたのに、ある日突然そのような能力や才能が目覚めたのには、一体どんなストーリーがあるのでしょうか?
では早速一緒にサヴァン症候群を学んでいきましょう。
後天性サヴァン症候群にはどんな特徴があるの?
サヴァン症候群は脳の欠損や障害によって発症する可能性が高いと言われているのですが、後天性の場合は事故などで脳に強い刺激が当たり、結果突然違った能力が開花するというのです。
事故などの強い刺激で脳に何らかのショックが原因となると、確率は低いかもしれませんが、私たち誰にもその可能性はあるということになります。
アメリカワシントン州に住むジェイソン・パジェットさんも以前は家具店で働くマッチョで遊び好きな男性として生きてきました。
それが31歳の時です。
バーで飲んだ帰りに強盗に暴行を受け、脳にひどい損傷を負います。
幸い命はとりとめたものの、目覚めた彼を待っていたのは、すべてが幾何学的な図形として見える世界でした。
周囲に理解されず困惑する中で、彼は孤独になり、4年間ひきこもり生活をします。
その中で彼は自分がサヴァン症候群、共感覚になったのではないかと感じるようになり、そこから独自のアートを発表したり、数理学を学ぶようになります。
人によっては、文字に色を感じたり、音に色を感じたり、形に味を感じたりするそうです。
同じものを見ても、私たちには見えない何かを彼らは感じ取っているのですね。
ジェイソンさんの描く図形は通常専門のコンピュータを駆使しないと描けないような美しく複雑な図形で、彼の場合は流水の構造が特有の幾何学的な図形と周波数で振動しているかのように見えると言います。
ジェイソンさんの他にも、脳出血で前頭屋を損傷した結果、詩や絵画の能力を発揮したトミー・マクビューさん、プールで脳震盪を起こし、片耳の聴覚を失ったものの、急にピアノ演奏ができるようになり、作曲の才能が開花したデレク・アマートさんなど、芸術面でその目覚めた才能を発揮されてる方もいらっしゃいます。
聴覚を失ってから、音楽の才能が開花する、何とも不思議な関係ですね。
天才は脳への強い刺激で目覚める?!
ただし詳しいメカニズムは分かっておらず、またサヴァン症候群の方の中には知覚障害者の方も多い為、因果関係など調査をしようとしても正確性、整合性に欠けることも起因していると言われています。
脳が受けたダメージによって機能低下した部分を他の脳部位がカバーすることで、後天性の驚異的能力が生まれるのではないかと言われており、脳の一連の活動は、脳の損傷→脳回復の再配線→能力の開放という3段階で行われると言われています。
ということは、一度受けたダメージ部分をリカバリーしようとする私たちの身体の修復機能の働きの一つだとも言えそうですね。
ただし、そこで能力の開放が起きることによって、それまでの能力とはけた違いのものを手に入れてしまうのですから、困惑される方が多いというのも頷けます。
またこのように後天性で発症するケースがあることから、その驚異的な能力や才能を開花させる目的で、人為的に脳を刺激する研究も進められているんだとか。
すごい時代になりましたね。
才能や能力は持って生まれたもの、努力で培うもののどちらかだと思っていた時代から、脳への刺激によって目覚める時代にもしかしたらなっていくのかもしれませんね。
日本人の有名人では誰かいるの?
海外の方に多いイメージのサヴァン症候群ですが、私たち日本人では誰かいらっしゃるのでしょうか?
有名な方でいうと、画家の山下清さんがいらっしゃいます。
人気テレビドラマ「裸の大将」のモデルとなった実在人物で、ご存知の方も多いと思います。
山下清さんは驚異的な記憶力をもった方で、旅先では絵を描かれず、旅先から帰ってきてから自宅で記憶を元に絵を描いていたというから、その記憶力の凄さを感じますね。
また絵画だけでなく、切り絵でも素晴らしい作品を沢山残されています。
サヴァン症候群特有の対人関係、コミュニケーションがうまく取れなかった一面はありますが、溢れ出る才能を生涯を通じて発揮された方だと言えると思います。
その他にもジミー大西さんもサヴァン症候群ではないかと言われているそうで、芸人さんから画家に転身され、活躍されていますが、その色使いは巨匠ピカソとそっくりだと言われる程です。
日本人の場合は、絵画の能力が開花された方が多いのですね。
山下さんもジミー大西さんの絵を見たことがある方は、そのタッチや色使いに吸い込まれそうだったと言われています。