腕が上がらない病気って何科?痛みなしで力が入らないときの原因とは。

運動もしてないのに朝から腕が上がらない。
肩や腕の痛みなしで力が入らない病気ってある?
何科を受診すればいいの?
外傷や筋肉痛なら心当たりがあるもの。
でもはっきりしたきっかけや痛みがないのに体に異変が起こることもあるんです。
今回は、腱板断裂と胸郭出口症候群の症状と原因について考えてみましょう。
腕が上がらない病気って何科?
はっきりした痛みがないのに急に腕が上がらなくなった。
腕を上げるとだるくなったりしびれたりする。
こんなことってあるのでしょうか?
代表的なものに、腱板断裂(損傷)と胸郭出口症候群があります。
どちらも「整形外科」が専門になりますね。
でも骨には異常がないため、単純エックス線(レントゲン)には写らず、はっきりしないこともあるようです。
診断には、超音波やMRI、造影剤などの検査が必要な場合もあります。
また手術が適応となることもありますので、早めの受診が必要ですね。
腱板断裂では痛みなしで力が入らないことも
普通、スポーツ中の衝突や転倒などが原因の外傷では痛みがつきもの。
筋肉そのものの外傷(ケガ)にも程度があって、単なる打ち身(打撲)、肉離れ(筋損傷、部分断裂)から筋断裂までありますね。
多くは足の筋肉(太ももやふくらはぎ)に見られるものです。
この場合、きっかけがはっきりしており、ひどい痛みや腫れが起こりますね。
でも肩の筋肉の場合、知らないうちに切れていた(断裂)ということがあるのです。
これが「腱板断裂」です。
腱板(ローテーターカフ)とは肩甲骨(表側と裏側)と上腕骨をつなぐ筋肉で、肩関節の安定した運動を支えるインナーマッスルです。
棘上筋、棘下筋、肩甲下筋、小円筋がこれにあたります。
この腱板の中でもっとも切れる頻度が高いのが「棘上筋」です。
棘上筋は、肩の関節を激しく使うスポーツ(野球など)や仕事を続けている場合、大きなきっかけがなくても断裂することがあるんです。
たとえば布団を敷いたり、洋服のホコリをバサッバサッとはたいたりしたときなどの些細な動作がそうなんです。
また損傷が徐々に進行して広がっていくケースもありますよ。
自然に切れた場合、あまり痛みを感じず、だるさや違和感のみのことも多いようですね。
急に腕が上がらなくなるケースだけでなく、意外と普通に上げられる場合や上がるけど力が入らないといった場合も見られます。
また上げ下ろしの際に引っかかる感じがすることも多いですね。
一方、断裂(損傷)した直後から、痛みやがあり(夜間痛、運動時痛など)、腕が上がらなくなるケースもありますよ。
これが「腱板断裂」の症状なんです。
40歳代以上の男性(特に右側)が多いとされています。
ここで簡単な見きわめ方です。
立っている状態では腕が上がらないけど、寝ている状態からだと割と楽に上げられるときは腱板断裂が疑われます。
このような場合、すぐに整形外科を受診しましょう。
治療は、大きく分けて保存療法と手術療法に分けられます。
保存療法では、理学療法(リハビリテーション)で他の筋肉で代償して肩関節の安定を図るような運動が行われます。
自宅でできる体操としては「棒体操」がありますね。
ただ棒を持って上げるのではなくてコツがありますよ。
- 仰向けに寝る。
- お腹の上に棒(なるべく軽いもの)を置く
- 手のひらを天井に向けた状態(鉄棒で懸垂するときの逆手)で棒を持つ
- いったん肘を曲げる
- そこから顔面すれすれに頭の上に向かって肘を伸ばす(棒を上げる)
- 同じ手順で元の位置に戻る
上腕二頭筋(力こぶの筋肉)が腱板肩関節を安定させることで腕をスムーズに上げることが出来るんです。
慣れてきたら、だんだん背中の角度をつけていって、まっすぐ立った(座った)状態でできるようになったら完成です。
一方、手術療法では、断裂した筋肉を縫合することが行われます。
断裂(損傷)の状態や症状、年齢や職業などの状況に応じて治療法が選択されるので、しっかり相談するとよいでしょう。
胸郭出口症候群はなで肩やいかり肩の女性に多い
胸郭出口症候群もよく見られる病態ですね。
少し難しい話になります。
頸椎(首の骨)から出る神経が複雑につながりあって、腕につながっている神経を「腕神経叢(わんしんけいそう)」と言います。
この腕神経叢は、とても狭い場所を通るので、圧迫されることが多い神経なんですね。
頸椎から出て、首の斜角筋の間を通って、鎖骨と第1肋骨の間を通過し、わきの下を通って腕につながっています。
しかも太い血管ともいっしょに走行しているので、圧迫されると様々な症状が出現するんです。
高いところにあるものを取ったり、洗濯物を干したり、電車の吊革につかまったりするような腕をあげる動作が急につらくなることで気づくことが多いようです。
女性に多く、なで肩で頚が長く見える人、逆にいかり肩で首が短くみえる人が体型的にはなりやすいとされていますね。
その他、腕を長時間上げていたり、重い荷物を持ったりすることが多い職業の方にも見られます。
珍しい例では「頚肋」といって普通はない骨が首から出ていることが原因のケースもあるんです。
- 腕を上げるとしびれ感(腕から手)がある
- 腕を上げるとき脱力感(腕から手)がある
- 肩こり
- 首の痛み
- 手が冷たい感じがする
- 小指側がしびれたり、ビリっとくる感覚障害がある
- 握力の低下がある
- 指が鈍くなって細かい作業ができなくなる
- 頭痛やめまい(自律神経の影響)
治療は、大きく分けて保存療法と手術療法に分けられます。
保存療法では、理学療法(リハビリテーション)で鎖骨や肩甲骨の位置を整える筋力強化(なで肩の場合)、頚部のストレッチやリラクゼーションなどが行われます。
手術療法では、第1肋骨や鎖骨、圧迫している筋肉の部分的な切除が行われるようです。
圧迫されているのが主に神経なのか血管なのか、圧迫しているのが骨なのか筋肉なのかによってもアプローチ方法が異なります。
早めに受診して、医師の診断や治療、理学療法士の施術や指導を受けましょう。
最後に自宅でできる対処法をまとめておきますね。
- 首や肩に負担をかけないこと:あごを引いて、頭が前方に出すぎない姿勢を心がける
- 肩こりを感じたらリラックスする:肩甲骨を上下・前後に動かす(回す)
- 首や肩を冷やさない(夏はクーラーの風にも注意)
- ストレスや精神の緊張を持続させない(首や肩の筋肉の緊張につながる)
- 同じ姿勢を1時間以上続けない
いかがでしたか?
腕が上がらない状態は、日常生活では困りもの。
放置するとつらいだけでなく、手術などの大変な治療が必要になったり、症状が長引いたりすることがあります。
単なる使い過ぎや疲れとして片づけないようにしましょう。