糖尿病とは?原因と症状をわかりやすく解説。

糖尿病はとても身近な病気です。
また初期症状が軽く、痛みも伴わないために軽視されがちです。
しかし見つかったときには進行していることも多く、脳卒中や心筋梗塞などの大病に直結するとても恐ろしい病気です。
糖尿病とはどんな病気なのでしょうか?
どうして血糖値が上がったり、尿に糖が混ざったりするのでしょうか?
その原因と症状、治療法や予防法について分かりやすく解説していきましょう。
糖尿病とは?原因と症状を分かりやすく解説
糖尿病を簡単に説明してみましょう。
消化吸収された糖質(ブドウ糖)は血液にのって体中を回っています。
しかしブドウ糖はそのままでは体内で使われることはありません。
筋肉の活動を例に取りましょう。
筋肉では活動を起こすためにエネルギー源が必要です。
そのエネルギー源はブドウ糖です。
ブドウ糖を筋肉に取り込んでエネルギー源に変えるには「インスリン」というホルモンの作用が必要になるのです。
また血内で余ったブドウ糖はどうなるのでしょうか?
エネルギー源が足りなくなったときのために、肝臓などに貯蔵されます。
その貯蔵のときに活躍するのもインスリンなのです。
ではインスリンの作用がなかったらどうなるのでしょう?
結果として、ブドウ糖が筋肉で使われず、肝臓でも貯蔵されない状態が続きます。
するとブドウ糖はいつまでも血液中にあって体中を回ったり、使われないまま尿として排出されたりすることになります。
このようにして血液中のブドウ糖の値(血糖値)が上がったり、尿に糖が混ざる(糖尿)ことになるのです。
この病態を糖尿病と呼んでいます。
糖尿病には2つのタイプがある
ブドウ糖を筋肉などに取り込んだり、肝臓などに貯蔵する(結果的に血糖値を下げる)ために必要なインスリン。
このインスリンを分泌するのが膵臓にあるランゲルハンス島β細胞です。
β細胞が自己免疫によって破壊され、インスリンが枯渇してしまうタイプをⅠ型糖尿病。
糖質の摂りすぎや運動不足、肥満などが原因で体のインスリンに対する反応(感受性)が低下してしまうタイプをⅡ型糖尿病と呼んでいます。
血糖値を下げることのできるホルモンはインスリンの他にはありません。
だからインスリンの不足や感受性の低下(インスリン抵抗性)が決定的な問題となるのです。
糖尿病は血管を破壊する病気
血糖値が慢性的に高くなったら体にどんな影響を与えるのでしょうか?
血液が粘っこくなったり、血管を作っているたんぱく質の老化を早めたり(糖化)することで全身の血管が破壊されてしまいます。
糖尿病が原因となる疾患をまとめてみましょう。
- 脳梗塞:脳の血管
- 狭心症(血液が通りにくい)・心筋梗塞(血管が完全に詰まる):心臓の血管
- 糖尿病性神経障害:神経の血管
- 糖尿病性網膜症(失明も):目の血管
- 糖尿病性腎症(腎不全で人工透析も):腎臓
- 足壊疽(切断の原因)
- 白内障:水晶体のたんぱく質の老化
- アルツハイマー型認知症
- 悪性腫瘍
特に末梢の細い血管に多く、脳や心臓の疾患、足の壊疽など、どれも深刻な状態を引き起こします。
また腎臓、目、神経の障害を特に「糖尿病の3大合併症」と呼んでいます。
では深刻な病態になる前にはどのような自覚症状(初期症状)があるのでしょうか?
これらは決して見逃してはいけない症状です。
- 体がだるい・すぐに疲れる
- 食後すぐに眠たくなる
- のどが渇く・多飲・多尿
- 手足の先のしびれ、感覚の鈍さ、便秘、立ちくらみ、勃起不全:神経の症状
- たんぱく尿の出現やむくみが起こる:腎臓の症状
- 親指のつけ根(母指球)や手の甲のヤセ:手の筋肉の萎縮
- 傷が治りにくい
- 感染症にかかりやすい
- 血糖値の上昇(健康診断結果より):空腹時血糖126mg/dl以上、HbA1c6.5%以上
他の疾患によって引き起こされる糖尿病も
他の疾患によって引き起こされる糖尿病もあります。
これらについてまとめてみましょう。
- 肝硬変
- 慢性膵炎・膵がん
- ステロイド糖尿病
- クッシング症候群
- 褐色細胞腫
- 先端巨大症 など
【遺伝子異常が原因の糖尿病】
- 若年発症成人型糖尿病
- ミトコンドリア遺伝子異常
- インスリン受容体異常症 など
糖尿病の予防法(リスク要因)と治療法を分かりやすく解説
まずは糖尿病の予防法(リスク要因)について見ていきましょう。
- カロリー制限や適度な運動をする(肥満)
- 禁煙・節煙をする(喫煙)
- 糖分を控える(ファーストフードや清涼飲料水の摂りすぎ)
- バランスのよい食事を心がける(白米や小麦など炭水化物主体の食生活)
- アルコールを控える(過剰な食欲)
- 6~7時間以上の睡眠を確保する(睡眠不足)
その他、最近の研究ではストレスによって血糖値が上がりやすくなることが報告されています。
これはストレスに対する体の防御反応によって、コルチゾールやアドレナリンといった血糖値を上げようとするホルモンの分泌が促進されるというものです。
またストレスによって暴飲暴食をするのも大きな要因と言われています。
ストレス解消は糖尿病予防にとても大切なことのようです。
では糖尿病予防に効果があると言われる食べ物と運動方法について見てみましょう。
糖や炭水化物の制限と併用することでとても効果的になります。
- あおさ、青のり、刻み昆布など:クロムがインスリン(糖質のエネルギー変換)の作用を助ける
- ごま、えんどう、大豆、抹茶、松の実など:亜鉛がインスリンの合成に関与する
- じゅんさい、なめこ、きくいも、ごぼうなど:水溶性食物繊維が血糖値の上昇を抑制する
- ながいも:粘り成分のデオスコランが血糖値の上昇を抑制する
- 運動の種類:インスリン感受性を高める有酸素運動
- 運動の強度:(220-年齢)×0.5~0.6で算出される1分間の目標心拍数
- 運動負荷量:歩行時間は1回15~30分を1日2回、歩数なら1万歩程度
- 運動の頻度:1週間に3日以上、できれば毎日実施
すでに糖尿病の診断のある方やインスリンの投与、投薬(SU薬など)を受けている方はご注意ください。
これらの食材を大量に食べても病気が改善するものではありません。
また薬剤や運動との関連によって、低血糖など重篤な症状を引き起こす可能性があります。
では最後に糖尿病の治療法についてまとめてみましょう。
- インスリン療法:不足したインスリンを外部から補う
- 薬物療法:経口血糖降下剤、GLP-1など:インスリンの分泌を促進する
- 薬物療法:ブドウ糖吸収阻害薬:糖質の吸収を緩やかにして血糖の上昇を抑える
- 食事療法:摂取カロリーの調整や規則正しい食事で血糖値を一定にする
- 運動療法:摂取カロリーの消費や筋肉のインスリン感受性を高める
これらの治療には、医師の診断や投薬、栄養士よる栄養指導、理学療法士による運動処方など、専門家によるサポートが必要になります。
病院での診断のもと、適切な治療を受けることをおすすめします。
糖尿病には代表的な2つのタイプの他、遺伝子や他の疾患なども関係する大変難しい病気です。
また気付かないままでいることで重大な疾患を招いてしまいます。
しかし食事や運動など生活習慣を見直すことで予防できるケース(Ⅱ型糖尿病)が大部分を占めています。
普段の生活を見直し、リスク要因を減らすことで予防していきましょう。