混合診療とは?全面解禁に向けて国や厚生労働省の進む方向を考える

昨年の後半から、時々ニュースや新聞で「混合診療」という名前を見るようになりました。
混合診療とはどのようなことでしょうか。
これまで日本では、健康保険での診療を行った際に、同時に保険外の診療を行っても、患者から保険外の費用をもらうことは法律で禁止しておりました。
しかし今年2016年の4月から開始される「患者申出療養」という制度は、保険診療を受けながら、一定の条件の下で、自由診療である保険適用前の医薬品等の使用が併用できるようになる制度です。
事実上の混合診療の全面解禁に向けた第一歩といえそうです。
「患者申出療養」という名の混合診療が導入されるにあたって、私たちの生活にどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
そのあたりについて、なるべく分かりやすく説明をさせて頂きたいと思います。
混合診療とは?
混合診療とはどういったものでしょうか。もう一度おさらいしてみましょう。
「保険内診療と保険外診療を必要に応じて同時に受診することができること」
これを混合診療と呼びます。
では、今回16年4月から国内で導入されようとしている混合診療のメリットについて考えて見ましょう。
保険内診療を受けていても、実費で保険外診療を受けることができる。
これまでは、健康保険の範囲内の診療と範囲を超えた診療は同時には行えませんでした。
混合診療が認められるようになると、保険外診療も必要に応じて、保険内診療と同時に受けることができます。
国内で実績のない新しい治療や投薬も国に申し出て、対応してもらえる道が開ける
患者から申し出のあった場合には、これまで国内で実績のない治療法や薬等も積極的に受ける道が開かれるようになります。
先進医療を受けに遠い医療機関まで行かずに近くの医療機関で治療を受けられる
今度解禁される混合医療である「患者申出療養」では申請は国指定の病院に提出しますが、治療は近くの病院で受けることができるようです。
このように、保険内診療を受けながら、同時に保険外診療(自由診療)を受けることはこれまで禁止されてきました。
なにやら今回の混合診療は良いことずくめのように思えますね。
しかし、混合診療にはいろいろと問題もありそうです。
次にそのデメリットについてご紹介したいと思います。
安全性が有効であると十分に確認されていない新薬がずっと「保険外診療」の枠にとどまる可能性がある
国や厚生労働省は増え続ける医療費の予算に頭を悩ませています。
今後「保険外診療」による新薬ができても、国はいつまでもその新薬を「保険外診療」の枠内に留めておく可能性が危惧されています。
なぜなら保険内診療の認可対象の増加は国の支出の増大を意味するからです。
そうなると画期的な新薬や治療法もずっと「保険外診療」のままでとどまり、高いお金を払える人しか十分な医療を受けられなくなることを危険視されています。
国は保険の給付範囲を見直そうとしているため、これまで「保険内診療」だったものまでも、「保険外診療」にされてしまう可能性がある
文字通り現在の緊縮財政では医療費と介護費の増大を抑えることに政府は苦労しております。
そのため保険外診療の幅を持たせることは、すなわちこれまで保険内診療だったものも見直し対象とされる可能性が十分にあります。
これまで3割の負担ですんだ治療にも10割負担にされてしまう危険があるといわれています。
これまで日本の優れた特長であった社会保険制度による「国民皆保険」が崩れる可能性がある
日本は先進国でも優秀な医療保険制度により、国民誰もが低額で高度な医療を受けることができました。
でも、今後保険外診療である自由診療の割合が増えてくると、誰しもが少ない負担で十分な医療を受けることができなくなることを心配視されています。
逆にお金を持っている人は、これまで認可されなかった様々な先進医療を海外に行かなくとも受診できる選択肢が増えて、より暮らしやすい医療の制度となるでしょう。
つまり貧富の差が、命の差にまで広がってしまうという危険をはらんでいます。
一見便利で素晴らしい制度のように思えますが、様々な医師が混合医療について反対の意を唱えているにはこのようなデメリットがあるからです。
全面解禁に向けて私達はどうすべきか
今は日本の財政における医療費はかなり差し迫った状態です。
今はまだ「患者申出療養」という一部の医療における保険外診療の認可となっていますが、今後の財政の逼迫によって、さらに保険外診療の対象が広がることが予想されます。
そうなったときに、私達は3割の負担であたり前のように受けられていた医療が全額自己負担となってしまうのです。
アメリカは盲腸の手術に何百万円も負担しなければいけないような状態です。
それは日本ほど医療に対して社会保障がすすんでいないからです。
今後日本もどんどんアメリカのような社会保障の道へすすんでしまいかねません。
私達一人ひとりが今回の混合診療のスタートについて反対の意思を国会に届けていけるように、しっかりと国政を見守っていく必要があると思います。
皆さんの意思で将来の日本の制度をしっかりと守っていきましょう。